玉露日和。 issue 05 芒種の茶会
高級茶として知られる玉露。日光を遮断する「被覆栽培」という手間のかかる特殊な栽培方法と熟練の製造によって生み出される深い旨味と甘みには、他の緑茶と一線を画す奥深い魅力があります。濃厚な旨味、とろりとした口当たり、そして覆い香と呼ばれる特有の香り。高級といわれる玉露だからこそ、まずは真摯に一杯と向き合ってみたい。菓子と茶をクリエーションする「茶菓の会」を主催する彗星菓子手製所のようさんによる季節の菓子と共に、五感を開放し、一期一会の光を味わう、玉露のあるひとときを感じてみませんか。
photo Yumiko Miyahama edit&text Chisa Nishinoiri
今月選んだお茶は…玉露「天下一」濃厚な味で通好みの玉露です。凝縮されたうま味と甘みは、ひと口で違いがわかります。袋入のお茶を和紙の包み袋で、プチギフト、手土産、お返しなどにもお使いいただけます。


二十四節気の9番目にあたる芒種(ぼうしゅ)は、毎年6月上旬〜下旬にあたる節気です。「芒」とは、イネ科植物の穂先の先端にある棘状の突起のことで、「芒」の「種」を撒く時期。米や麦などの穀物の種をまく時期という意味があります。この頃から雨空が増えていき、梅雨入りの季節とも重なります。
このように、1年を24等分する二十四節気の暦は日本の四季の情緒を感じる指標であり、農業と関わりの深い言葉が使われていることからも古くから農作業の時期を計る指標としても親しまれていことが読み解けます。

青揚の 枝伐り下ろし 湯種蒔き ゆゆしき君に 恋ひ渡るかも
『万葉集』には、そんな芒種の田植えにまつわる和歌も収められています。これは「青楊の枝を伐って田に挿し、清めた種を蒔くように、恐れつつしむべきあなた様に恋し続けることです」と、恋しい想い綴った歌です。
「田植えにすら恋心を歌うかつての殿上人たちは、良い意味で暢気であり、心の余裕を感じさせますね。そして、田んぼに稲が根付くように、この恋も深く根を張ってくれたらいいのになぁ、と身分違いの慎むべき恋心を密かに重ねたのかもしれませんね」と、ようさん。
今回の一首にちなんで、田植えを終えたばかりの田んぼの風景を彷彿とさせる茶菓子を玉露に添えてくれました。

今回の菓子は、こし餡、卵、砂糖、上新粉を混ぜて蒸し上げる和菓子「浮島」です。ようさんは、大地の色に見立てて生地にほんのりココアパウダーを加えたアレンジを効かせて、旬の食材であるそら豆の餡で稲を表現。ココアのほろ苦さが加わり、ガトーショコラのようなしっとりとした食感に仕上げました。
そして初々しい稲をイメージした茶菓と共に、今回は急須で淹れる玉露をご提案します。

今回ようさんが使ったのは、陶芸家・水野博司さんの常滑の急須です。同連載でもたびたびご紹介しているように、道具は自分の手のサイズに合ったものを選ぶことが大切です。
「加えてお茶の美味しさは、茶葉の広がりと共に最後の一滴まで玉露の旨みを出し注ぎ切ることが大切です。そのために、急須は小さめのものを選ぶのが良いと思います。この急須も、私が持っている道具の中で最小のもの。急須は使ってみないことにはその良し悪しはわかりづらいのですが、私は茶漉しを使わなくても茶葉が注ぎ口から漏れてこないかを見極めのポイントにしています」
ちなみに玉露は少し低めの温度で淹れるのがよしとされています。その分、茶器はしっかり温めてゆっくりと茶葉の香りを引き出すのもポイントです。

細部にまでこだわった、この美しい水野さんの急須は「お茶を愛する人に愛される急須」として大変人気があります。
「急須に内蔵されている茶漉し部分は外注されていたり貼り付けのタイプのものも多いですが、水野さんの作る急須はすべて手作りです。一つひとつ細かな穴を開けて制作されていて、その技術力の高さ、美しさに惚れ惚れします。穴が大きすぎると茶葉がすり抜けてしまうし、小さすぎても詰まってしまう。何度も試行錯誤して工夫されたんだろうなと、使うたびにとても感心してしまいます」

今回は、古道具屋さんで見つけたという素敵な竹籠の中に茶道具を詰めて室礼を整えてくれたようさん。
「玉露を美味しく淹れるには、お湯は50〜60℃前後の低めの温度が適温と言われているので、湯冷ししたお湯をポットや魔法瓶に入れて持ち運べばどこでも楽しむことができます。これからの季節、野点ならぬピクニック気分で、爽やかな緑に囲まれた屋外で玉露を楽しんでみてはいかがでしょうか」

今月選んだお茶は…玉露「天下一」濃厚な味で通好みの玉露です。凝縮されたうま味と甘みは、ひと口で違いがわかります。袋入のお茶を和紙の包み袋で、プチギフト、手土産、お返しなどにもお使いいただけます。
